医薬品卸訪問から始まるMRの一日 *開業医・中小病院編*

(2018.2.10 投稿)

導入研修が終わって各地に配属されると、一人一人に「担当」と「目標数字」を言い渡されます。

担当は大きく2つのタイプに分けられ、基本的に内資系メーカーでは「エリア制」、外資系メーカーでは「領域性」を導入されていることが多い傾向にあります。

「エリア制」・・・市区町村等、近隣や隣接した地域を担当します。多くの場合、さらに開業医担当と病院担当とにわかれています。

「開業医、中小病院担当」
担当エリア内で、自社が扱う領域の製品すべての情報提供活動をします
企業によって異なりますが、1MRあたり20軒~100軒くらい担当を持ちます
「大学病院、基幹病院担当」
大学病院などの大きな病院ではメイン担当とサブ担当の複数人で担当を持ちます
1MRあたり5~10軒くらいの担当を持ちます

 

「領域制」・・・糖尿病領域、精神領域等、扱う薬剤によって担当を分けます。同じエリア、同じ病院に同じ会社のMRが複数出入りします。

 

担当によって会社から求められる内容や仕事が違ってきます。
このページでは、「開業医・中小病院」を担当するMRさんのとある一日を紹介させていただきます。
(*開業医とは、医院やクリニックの事を指します。)

「開業医・中小病院」担当MRの一日を取材

◎今回、取材させていただいた方

 

 

*MRはその時の状況や優先順位などを随時判断しながら毎日違う動きをします。
日によって訪問する病院も違いますし、仕事内容も変わってきますので、一例として参考にしていただけましたら幸いです。

 

 

MRと医薬品卸の関係

開業医担当者が病院担当者と大きく違う点は、2つあります。

①医薬品卸を訪問する

②担当軒数が多い

医薬品が医療機関に届くまで

製薬業界の流通は少し変わっています。
MRは商品を納入することはしませんし、価格交渉もしません。

では誰がするかというと、MS(読み方:エムエス)さんがします。

MSとは、Marketing Specialistの略で、医薬品卸の販売担当者で日本固有の卸機能です。
・製薬会社から発注した医薬品を、医療機関や調剤薬局への安定供給
・医薬品の価格交渉
・医師や薬剤師と面会し、医薬品の情報提供や収集活動
メインの役割は上記の3つとなります。

医薬品 流通

医療用医薬品は、製薬会社⇒医薬品卸⇒医療機関や調剤薬局という経路で届きます。
また、法律でMRは価格に関与してはいけないと決められています。

メーカーが流通業者の販売価格(再販売価格)を拘束することは,原則として不公正な取引方法に該当し,違法となる。
独占禁止法  「医薬品の卸売価格の拘束」より

上記のように、法的に決められているので、MRは価格に関与できません。
また、倫理的な問題からも、生命関連商品である医薬品は安全性や有効性、併用薬等色々考えたうえで一人一人の状況にあわせ処方されなければなりませんので、医薬品は「安いから使う」という価格競争に走ってはいけない理由として言われています。

MSと話すときに気をつける点

医薬品卸は、全国的に広いシェアを持つ広域卸と、地域密着型の地場卸があり、各製薬会社の医薬品等が納入されます。

【広域卸】
・アルフレッサホールディングス
・メディパルホールディングス
・スズケン
・東宝ホールディングス
・バイタルケーエスケーホールディングス
【各地の地場卸】

 

そして、各医薬品卸に所属するMSが、医療機関や調剤薬局等へ医薬品や医療材料などを配達します。

医療機関や調剤薬局は在庫を多く抱えたくないので、必要な量をその都度医薬品卸へ発注します。
中にはお昼頃連絡があり、”夕方までに持ってきて”という注文もあったりするため、MSはほぼ毎日、ときには一日に何回も同じ医療機関や調剤薬局へ配達をするということもあります。

その際、医師や薬剤師と面会することもありますので、MRよりも信頼関係が強かったり、各製薬会社の医薬品を扱っておりますので、最近の処方傾向等MRの知りたい情報を持っていたりします。
MRは面会できない先生でも、MSと一緒なら会ってもらえるというクリニックも存在しますので、MSと信頼関係を築くことは開業医MRとしてはとても重要です。

そのため、MRは毎朝2~3か所、卸を訪問します。

ただ、ここで1点注意しなければならないことがあります!

「その薬はどこの卸から納入されているのか?」確認しましょう
ほとんどの医療機関・調剤薬局では「この薬は、この卸から」、「このメーカーは、この卸から」というように、薬剤の銘柄や製薬メーカーによって発注先の卸店が決まっている場合が多いのです。

例えば「〇×医院では、Aという薬がアルフレッサから納入されていて、もっと処方を伸ばしたい」というときはアルフレッサのMSに相談し一緒に行動します。

時々、他の卸のMSから「〇×医院のAを一緒に処方を伸ばそう」というようなお誘いを受けることもありますが、それは裏切り行為でもありますので、誘いに乗ってしまうとトラブルの原因となり、信頼関係も失ってしまいます。

余談ですが、筆者が新人の頃は、毎日上がってくる売り上げを、施設ごとに、どこの卸から何本入っているか、を記入し、医療機関ごとに一緒に動くMSを決めていました。

医療機関によっては、”その施設でめちゃくちゃ強いMS”がいることがあります。
納入状況を確認しながら強いMSの力を借りたり、自分が強いところではMSのお願いを聞いたり・・
担当軒数が多い開業医担当MRは、医療機関へ頻回訪問することが難しく、医師のニーズや悩みなどを掴むことに苦労することがあります。
MSと良い関係を築くことは、医師や薬剤師と良い関係を築くためにも大切です。

MSに協力したいと思われるMRとは

Kさんが訪問する卸は4か所
・メディセオ
・アルフレッサ
・スズケン
・東邦薬品
毎日、2~3軒を訪問し、1軒当たり3~4人と話をするそうです。

朝のMSは忙しく、その日の配送準備をしたり、訪問準備をするなかでMRの話を聞きます。
卸の事務所内はMRでごった返し、MSと話をするためにタイミングを伺ったり、順番待ちをしたりします。

そんな中ではなかなか長話もしていられません。
MSと仲良くなるには自分が医師と信頼関係を築き、自力で処方を増やすことが一番です。
”一緒に処方を伸ばしたい”と思ってもらえるMRに選んでもらえたら鬼に金棒です。

普段の生活でも自分で努力せず、頼られてばかりだと嫌になりますよね。
MSも毎日MRにお願いばかりされていたら嫌になってしまうのではないでしょうか。

MSも営業職で目標数字を持っているので、自分の力で売り上げを増やしてくれるMRとは一緒に動いてくれやすくなります。
情報もお互いに提供しあい信頼関係も深まるので、お互いwin-winの関係となります。

開業医担当MRが会社ですること

卸を訪問した後は、時間に余裕があれば会社へ戻り内勤し、余裕がなければ担当エリア近くのファミレスなどで内勤します。

会社では、
・チームミーティング
・前日の売り上げの確認
・文献などの訪問準備
・医療機関や薬局で依頼される冊子等の補充
などを行います。

内資系企業では一人に1台固定デスクがあり全員の席が決まっていることが多いですが、外資系ではフリーデスク方式で長いテーブルの好きな場所に座ります。
席は決まっていませんが、自然とチーム、領域ごとに座る場所がまとまっているので、新しい文献等の情報共有をしたり、相談をしたりする時間でもあります。

開業医・中小病院の訪問のゴールデンタイム

開業医や中小病院は、大きな病院のようにアポイント制や訪問規制がある施設はほとんどありません。
ただ、だいたい会える時間は決まっています。

業界内で、医師に面会できる確率の高いゴールデンタイムと呼ばれる時間をお示しします。

開業医⇒午前診療・午後診療が終わった後の、12:00~13:00、18:00~20:00
中小病院⇒午前診療が終わった後の、12:00~14:00

Kさんは一日6~10軒くらい訪問しているそうです。
この日は、

11:00  A市 〇〇クリニック
12:00 B市 △胃腸科医院
12:40 B市 〇△耳鼻咽喉科クリニック
13:10~14:00 B市 □病院

15:00 C町 ◇内科クリニック
16:00 A市 ▲皮膚科クリニック
16:30~17:00 A市 〇×調剤薬局
18:00 A市 〇□内科医院
18:50 B市 ◆整形外科クリニック
20:00 B市 〇▲皮膚科クリニック

訪問スケジュールは長いスパンで考え、重要な得意先は必ず会えるよう無理のない時間配分をしているそうです。
また、基本的に医療機関を訪問後は調剤薬局もセットで訪問するようにしていると教えてくれました。

例えば、「併売品」といって、薬の成分は全く同じなのに、2か所の製薬会社から違った製品名で発売されることがあります。
調剤薬局では場所や在庫の関係から薬の種類を増やすことを嫌がられる場合が多いので、どちらか一つしか採用にならない場合が多いのが現状です。
採用してほしい時だけ来るMRと普段から訪問している顔見知りのMRとだったら、普段から来ているメーカーの物を採用するのではないでしょうか?

医師と話したことを共有したり、服薬指導時にお願いしたい点を伝えたり、薬局へ訪問することも大切です。

また、医療機関によってすぐに会える時もあれば、何時間も待つこともありますので、他社の製薬メーカーと情報交換したり、勉強していたりします。
たまにおしゃべりに夢中になって盛り上がっているMRもいますが、具合の悪い患者さんが来ている場所だということは忘れないでほしいと思います。

まとめ

MR 女性

大きな病院を担当するためには、経験と豊富な知識が必要になってくるため、新入社員として入ってくるとまずは開業医担当になることが多いです。

例えば、花粉症の治療薬だけでも数十種類あり、複数の製薬メーカーから販売されています。
多いところでは100軒以上の担当を持つ開業医MRが、複数ある花粉症薬の中から処方してもらうには、自分一人の努力ではどうにもならない部分が出てきます。

自分が頑張るというのは大前提ですが、医薬品卸のMSや薬剤師、他社MR等の力も借りながら活動をすることで、何倍も成果に結びつきやすくなります。
それには信頼関係が大切なので、まずは医師の質問の意図を正確につかんだり、ニーズに沿った話をしたり・・・自分自身も力をつけ、win-winの関係を築きましょう!