ワイアットラクト(株) 代表取締役 高橋俊夫さん インタビュー 第1回
(2018.2.21 投稿)
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「ここ2~3年で、製薬業界が体験したことのないような非常に激しい環境変化が今起きている」
そう話してくださったのは、元祖MR専門転職支援サービス「MRキャリア.com」を運営されている「ワイアットラクト(株)」の代表取締役、高橋俊夫さんです。
初めてMRに特化した「MR専門転職エージェント」として2001年に設立され、豊富な業界知識、独自の面接サポート等により求職者、企業共に高い信頼を集めていることでも有名です。
今回は、就職したい人と採用を考える製薬企業を結ぶ最前線でご活躍されている「MR転職のプロフェッショナル」に“製薬業界の流れとして感じることや今後の予想図、採用になる人物像”までお話いただきました。
第一回は“MR転職業界のプロが教える、製薬業界の環境変化と求人の流れ”
第二回は“中途採用に残された道から採用を勝ち取れるMR像”
二回に分けて掲載させていただきます。
今後、MRへの転職を考えている方にはぜひお読みいただきたい記事です。
〇今回のインタビューに答えてくださった方
高橋 俊夫さん
「ワイアットラクト(株)」の代表取締役。
経営コンサルタントとしての経験を生かし、2001年より日本で初めてコンピテンシー・アセスメント手法を活用したMR専門転職支援サービス「MRキャリア.com」を運営している。
2010年からは各分野の専門家による総合情報サイト「All About」において、MRの転職支援で培ってきた知識・経験・ノウハウを活用して、MRの転職ノウハウなどの記事を執筆中。
≫「MRキャリア.com」のサイトはこちら
第一回目の今回は、「MR転職業界のプロが教える、製薬業界の環境変化と求人の流れ」についてお話をお伺いしました。
第一回「MR転職業界のプロが教える、製薬業界の環境変化と求人の流れ」
近年起きている製薬業界の変化
「長年、転職のお手伝いをする中で製薬業界が変わってきている。ここ2~3年で顕著にMRの求人が減ってきた。
製薬業界が今まで体験したことのないような非常に激しい環境変化が今起きている」
ワイアットラクト(株)代表取締役 高橋俊夫さん(以下 高橋さん)は、今の製薬業界に感じていることを話してくれました。
「その背景にあるのはジェネリックが本格的に普及してきたからです。
新薬メーカーは、長期収載品のお陰で経営が安定していました。
しかし政府の方針により、ジェネリックが本格的に普及し始めると、長期収載品の市場がジェネリックに奪われてしまうということが起きています。」
「まず、新薬メーカーは経営を安定させるために、常に新薬を開発し続けなければならない。
オンコロジー領域やスペシャリティ領域でやっていく必要があるが、新たに画期的新薬や経営の柱となる薬を作ることは難しいメーカーも出てきている。
新薬が発売されると何年かは実績が上がる。
しかし、特許切れまでに次の新薬を開発できないとプレジェネリックに置き換えられてしまう。
そして、製薬メーカーは全体的に業績が不安定になってくる。
業績が波打つ状態になり始めていて、これからますます顕著になっていくでしょう。」
そう言って、製薬業界の激動の背景を教えてくれました。
そして、次のように続けられました。
MR求人への影響
「新薬メーカーは業績が落ち込んでもある程度利益を出させるために損益の分岐点を下げることも必要です。
そこで固定費をいかに減らすか考えます。
製薬会社にとっては、研究開発費は下げるわけにはいかないので、人件費の約半数を占めるMRが最も大きな固定費であり、正社員のMRを減らそうという考えになります。
新卒採用は極端に抑制してしまうとアンバランスになってしまうので、一定数は採用する。
そこでキャリア採用が極端に減る。
この傾向はこれから先も続いていくと思われます。」
それでは、ジェネリックメーカーのMRはどんどん必要になるのでは?
と思い、疑問を聞いてみました。
「ジェネリックメーカーのMR採用が増えると思いますよね?
それが増えないんです。
政府は超高齢化社会で医療費を抑えるためにジェネリックの普及を掲げています。
まずは薬剤費を抑えるために、ジェネリックに置き換えることを推奨していますね。
しかし、実は政府はもう一段階考えていて、ジェネリックの薬価も抑えようとしているのです。
ジェネリックは数量ベースでみるとかなり増えていますが、薬価も毎年見直すたびに単価が下がりますので、全体としてはあまり伸びていない。
ローコストオペレーションが必要な分野であり、正社員のMRを増やすことは難しいのです。」
新薬メーカーもジェネリックメーカーも正社員MRの採用には積極的ではないのですね。
それでは、CSOのコントラクトMRはどのような状況なのでしょうか?
「MRを正社員として採用が困難な状況で、固定費にならない形でMRを活用できるのがコントラクトMRです。
従来、新薬メーカーでは、欠員の補充やMRを増員する際に、正社員として採りきれなかった部分をCSOでまかなってきました。
契約期間は基本的に2年、時には1年の時もあります。
しかし、MRを増員する機会がなくなれば、CSOのニーズも無くなり、現在では欠員補充くらいのニーズしかありません。
CSOを新しく使い始める新薬メーカーも増えていますが、コントラクトMRの総数としてはあまり変わらないか、むしろ減ったように感じています。
ジェネリックメーカーでもCSOを使います。
CSOを活用するのは、大型新薬が特許切れになるタイミングです。
大型新薬が特許切れになると、たくさんのメーカーから一気にジェネリックが発売され、同時に各メーカー間でシェアの奪い合いが始まります。
最初の6か月から1年くらいで大まかなシェアは決まってしまうため、マンパワーで勝負できるよう、このタイミングで多くのMRが必要となります。
これは一時的なニーズで終わるため、限られた使い方になってしまいます。
時期的に募集が全くない時もあり、CSOのニーズの波が大きくなってきていると感じています。」
高橋さんは、長年製薬業界を見てきて最近感じることをこうお話してくださいました。
筆者も、製薬会社と医療費は切っても切れない関係にあるのは理解していたつもりですが、これほどまでに製薬業界、転職事情が変わっていたことに正直驚きました。
それでは、「中途でMRになる道はもう残されていないのか?」という疑問がわいてきますが、第2弾のインタビューでは「MR中途採用の実態、採用されるMR像」についてお話しいただきます。