MRの接待事情 接待が禁止になったってホント!?

(2018.6.4 投稿)

最近MRをしている方には浦島太郎のような話かもしれませんが、私が新人MRだった10数年前は、接待やクリニック主催のイベントなどが頻繁にありました。

私が在籍していた会社では課ごとに接待の予算を割り振られ、それをグループ員で話し合って分け合うという形だったので、みんな”どこの病院で誰を接待して、その成果として何が得られるのか”などアピール合戦をして予算の取り合いをしていた程です。

しかし、2012年4月、接待の規制が大きく変わり「接待は原則禁止」となりました。

なぜ、接待は原則禁止になったのか?

医薬品業界では、「医療用医薬品製造販売業公正取引協議会」(医薬品公取協)という製薬会社231社から構成される組織で、医療用医薬品の供給・販売に際し、公正かつ自由な競争が行われるためのルールを守っていくための自主的な規制があります。

ルールの中では2012年以前にも「華美・過大な接待は禁止」とされていたのですが、接待の頻度や内容は製薬会社によって大きく異なり、外資系では以前から接待は控えめな傾向、内資系企業の経費をたくさん使える会社では毎日のように接待をしているMRもいたりと、会社間でバラツキが大きかったのが実情です。
そして、今回規制として大々的に発表されたのには以下のような背景があります。

創薬難度が高まる中、私共は、有効性と安全性が高い医薬品を、いち早く患者さんに安定して提供するという根源的な使命を果たすべく、日々果敢な努力を重ねています。
医薬品産業が社会から信頼され、将来にわたって存続し続けるためには、この様な活動がコンプライアンス徹底の下で行われ、国民に理解されなければなりません。

医薬品の選択は、品質・情報・価格に基づき、医療担当者が適正に判断して決定されるべきものであり、取引を不当に誘引する手段として、医療機関や医療担当者に、金品・サービスなどの景品類を提供するようなことがあれば、適正な選択を歪めることになります。

医療用医薬品製造販売業公正取引協議会 https://www.iyakuhin-koutorikyo.org/index.php  

接待だけで医薬品の処方が大きく変わるということは考えづらいですが、医薬品という生命関連製品を扱っている以上、過度な接待やサービスなどで医師やコメディカル等の判断を誘引してはいけないというのは納得ですよね。

こういったことを背景に、製薬会社間で接待合戦を辞め、本来のMRの仕事に専念していこうということなのです。

ルールの変更内容でどう変わった?

内容としては以下のように定められ、ゴルフなどのお付き合いや2次会は禁止、「商談の打ち合わせに伴う飲食」(いわゆる接待のこと)は1人単価5000円を上限となりました。

*違反を繰り返したり、違反が悪質な場合は、会社名・内容の公表や違約金・除名などの処分を受けることがあります。

今までは医師や医療関係者とのコミュニケーションを深めることで、難航している医薬品の採用に繋がったり、ここぞという時にお願いできるという面が少なからずあったと思います。

特にプライマリー領域と呼ばれる生活習慣病や花粉症の医薬品などは発売時期も少しずつずれますが例えば1年以内に6製剤が発売など一定の時期にまとまって、連続して発売されることが多いです。

高血圧の薬を例に挙げると、「血圧を下げる」という大きな目的は同じで、その付加的な「血圧を強力に下げる」ことや「腎臓に優しい」こと、「薬価が安い」など他の薬といかに差別化して使ってもらうかがキーになります。
同じ系統の薬が出る場合は傾向として「早く出た薬の方が売れる」ということがありますので、後から発売になったメーカーは薬の差別化だけでは厳しい部分があり、人間関係でカバーしているという側面もありました。
そのため生活習慣病を扱う製薬会社では人間関係を大切にすることが大切です。

今回の規制で、「接待が一人単価上限5千円」となりましたが、実際にここぞ!という場面で接待することが多いため、その金額内で接待することが非常に厳しくなりました。
そのため接待は実質ほぼできなくなったと考えてよいと思います。

近年の各会社の営業方針としては、「医薬品の適正使用」という本来のMRの姿に戻すべく、接待を減らし「説明会」や「講演会」などの学術的な方面にもっと力を入れていくというところが多くなっていると感じますし、製薬業界全体で、学術の知識を豊富に持ち、製品知識が豊かなスペシャリストの育成に力を入れています。

今後MRは減少する可能性もあり、最近では早期退職を募っている会社もあります。
今後もMRとして生き残っていくためには常に勉強し、医師やコメディカルに必要とされるMRになる必要があると切に感じます。

医師の反応は?

それでは、今まで製薬会社からの接待を受けてきた医師はこの規制ができたことでどう感じているのでしょうか。

医師・医療従事者向け情報サービスサイトを運営する株式会社ケアネットで、社医師会員 3,000 人に対し、
製薬企業の「接待見直し」による MR(医薬情報担当者)との関係性に関する調査をしたものがありますので、ご紹介させていただきます。

ケアネット調べ http://www.carenet.co.jp

医師の 7 割以上は 2012年4 月以降も「面会頻度は変わらない」

4月以降にMRと面会頻度は変わるかという問いに対し、医師の7割以上は「特に変わらない」という回答でした。
次いで、「全般的に減る」が約13%、「限定したMRとだけ面会する」が約5%、「現在MRとは面会していない」が約4%、「全般的に増える」が約1%でした。

ライフスタイルの変化とともに家族との時間を大切にする医師が増えていることもあり、接待を面倒だと感じる医師も増えています。
大部分の医師がMRに求めることは「接待」ではなく、もっと大切なことでした。

全体の 77%が『特に変わらない』と回答。
新基準と関係なく、以前から公務員規定により制限されている国公立病院勤務医の場合は 81.9%に上る。
診療所医師で 79.7%、国公立以外の病院でも 73.0%であり、4 月以降も“接待”の有無に左右されないと考えている医師が大半を占める結果となった。

                                                                       出典:ケアネット http://www.carenet.co.jp

 

医師がMRに期待すること

医師はMRに接待ではなく、もっと別のことを期待していることがわかりました。
それでは、医師はMRに何を期待しているのでしょうか。

「情報提供能力の高い MR が減った」「プロらしく、正しい情報を提供することに期待」
4 月以降、MR に期待することとして、『先生の専門領域の学術知識』(62.2%)『エビデンス・医学論文の提供』(51.0%)が挙げられた。
「本来の役割である情報提供が十分できない MR が大多数の中、接待のみ制限しているのが問題」「医師の質問にその場で適切に答えられる知識を持ってほしい」などの声が多く寄せられた。
一方、全体の 13.5%が『特に期待していない』と回答。

医師が最も期待していること
1位「先生の専門領域の学術知識」
2位「エビデンス・医学論文の提供」
3位「先生の専門外領域の学術知識」
4位「開発中製品の情報提供」

出典:ケアネット http://www.carenet.co.jp

医師はMRに「高い情報提供能力」を求めています。
接待がどうこうの前にMRの最も大切な仕事である「医薬品の情報提供」が十分にできていない、以前よりもMRの質が落ちていると感じられているのは実に悲しいことですね。

医師のコメントの中で、「知識不足・勉強不足で医師の質問や希望に十分に対応できていない」とありましたが、まさに核心をついていると思いました。

私が新人の頃は担当の先生が書いた文献は全て読み、どのようなことを専門に研究している先生なのか把握することは基本事項として教えられました。
そして、医学書のコーナーで専門書を買って勉強したり、医師に提供することは多くのMRがしていることだと思いますが、勉強熱心な医師はスピードも重要で日々勉強していないと全くついていけません。
以前、基幹病院に勤務する糖尿病領域で有名な医師を担当していたことがあるのですが、海外で文献が発表されるとすぐに文献を持ってくるよう依頼があり、生方がいかに日々情報を敏感にキャッチしているかを思い知らされました。

医師には会社で集めた臨床データよりも、実際に患者さんの病気に使われた1例の症例報告の方が喜ばれることがあります。
会社から与えられた資料やデータだけでなく、自ら最先端の情報に意識を向け、医師に依頼される前に文献や情報を持っていけるMRが1流のMRで医師からも必要とされるMRなのではないでしょうか。

まとめ

2012年4月からMRの接待は原則禁止になりましたが、医師は接待ではなくMRに「情報」を求めています。
アメリカでは接待が法律で禁止され学術知識で勝負しているために医師と強固な信頼関係を築いているように、日本でも接待で人間関係を深めるのではなく、「医師が欲しいと思っている情報や知識」を提供することで信頼関係を築いていく時代に変わってきました。
接待が無くなったためにMRになりたいという人や女性も増えており、MRという職業への意識も変わってきているように感じます。

真の「医薬品のプロ」として、これからは「学術知識」で勝負することになりますが、そのことで今までよりも医師、患者さんとの距離が近づきます。
今まで以上に勉強や最先端の医療情報にアンテナを張ることになりますので大変でもありますが、MRとしての「やりがい」は増すのではないかと考えています。